反貧困ー「すべり台社会」からの脱出
- 作者: 湯浅誠
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/04/22
- メディア: 新書
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〜しかし、わざわざ抽象的な概念を使うのは、それが金銭に限定されないからだ。有形・無形のさまざまなものが、”溜め”の機能を有している。頼れる家族・友人がいるというのは、人間関係の”溜め”である。また、自分に自信がある、何かをできると思える、自分を大切にできるというのは、精神的な”溜め”である。(pp.78-79)
○貧困が大量に生み出される社会は弱い。どれだけ大規模な軍事力を持っていようとも、どれだけ高いGDPを誇っていようとも、決定的に弱い。そのような社会では、人間が人間らしく再生産されていかないからである。誰も、弱いものイジメをする子どもを「強い子」とは思わないだろう。
人間を再生産できない社会に「持続可能性」はない。私たちは、誰に対しても人間らしい労働と生活を保障できる、「強い社会」を目指すべきである。(p.209)
□貧困は確実に、広がりながら次の世代に受け継がれていく。受ける教育も、残念ながら経済状況によって制限される部分が大きい。それらが国力の低下をもたらすのであれば、いま貧困に縁がないから私には関係ない、と言えないだろう。貧困は、単に人道的な理由によって取り組むべき問題ではない。貧困が社会に存在している事で、誰もがその利害関係者であるといえる。
日本の人口動態を考えると、人間の再生産できない社会の行き着くところは、前回読んだアメリカの貧困以上の惨状を呈しているかもしれない。